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後藤直紀さん Naoki Goto
*焙煎士として*
「コーヒーに生きる人々」3人目の紹介は横浜生まれ・福岡育ちの後藤直紀さん。福岡在住歴38年。知る人ぞ知る焙煎のプロフェッショナルだ。後藤さんは昨年フランス・ニースで初開催されたコーヒー焙煎の世界大会で世界一に輝いた。現在放送中のBBIQのCMで俳優・阿部寛さんと対話するシーンを見かけた人もいるのでは?メディアはあまり好きではないと苦笑いの後藤さんだが、出演を決めたのは「焙煎士」という職人の存在を広めたいという想いから。「みんなが知るコーヒーはたくさんの人の手と工程を踏んで作られている。誰かがコーヒーを焼いていることを知ってもらえたら」とにこやかに話してくれた。

*チャンピオンが誕生する街*
福岡の魅力を尋ねると「ご飯とお酒が美味しいこと」と「県民性」と返ってきた。「各地から人が集まってくる福岡は物事を柔軟に受け入れたり許したりできるオープンな気持ちの人が多い」という。この所コーヒー業界では福岡の人間の活躍が目覚ましい。その理由を後藤さんは県民性によるものだと考えているようだ。妙に納得のいく分析である。福岡がより住みやすくなるには?と聞くと「人口が増えていて、車の交通マナーやバスや電車を待つ人のマナー改善が必要。発砲事件があると知人から心配されることも。今後は県外の人が持つ福岡のイメージがもっと良くなればいい」と真剣な眼差しで話してくれた。

*東京に通い老舗で修行*
もとはイベント会社に勤めながら独学で焙煎を学んでいたそうだが、コーヒー好きが集うサークルの仲間たちが後藤さんに火をつけた。「コーヒーには栄養素がないから本当は飲まなくても生きていけるけど(笑)
そういったものにこだわる人たちは心底人生を楽しんでいるから」と話す。始めは業界に入ろうと求人を探したが求人もなく、それなら自分でやるしかないと考えを改め、修行の場に選んだのは東京の老舗喫茶店「バッハコーヒー」だ。
3年越しで東京に通い、焙煎・抽出・サービスやマネジメントに至るまで必要なノウハウを学んだ。2008年ついに後藤さんは開業に乗り出し、大野城・白木原に自身のお店を構えた。

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*焙煎士には二通り*
お店には十数種類のコーヒーが並ぶ。店名が刻まれた焙煎機を横に淡々と焙煎を進める後藤さん。その様子に思わず面食らう人も多いとか。「焙煎には人柄が出る」と笑って話してくれた。その場の感性で焼く人と計画性で焼く人に分かれ、後藤さんは後者。「こんな風に焙煎しているけどそれまでの準備に注力する」と話す。何千バッチも焙煎を繰り返し、経験に裏付けされた技術が引き出している、その深い味わいをぜひお店で体験してほしい。

次回は後藤さんの焙煎にかける想いを紹介します。お楽しみに!
文・写真 山口美奈子

*店舗情報*
「豆香洞コーヒー」
住所:大野城市白木原3-3-1
電話:092-502-5033
営業時間:11:00~19:30
定休日:水曜/第2・4木曜