後藤直紀さん Naoki Goto
*世界チャンピオンに*
開業からわずか4年、後藤さんは国内の焙煎大会「ジャパン・コーヒー・ロースティング・チャレンジ」において優勝を果たす。翌年の世界大会に日本代表として出場し、世界チャンピオンに輝いたのが昨年だ。大会開催地はフランス・ニース。慣れない環境下、用意された焙煎機で自分の焙煎をしなくてはならない。宣言通りの「焙煎手順」と「味」であるかどうか再現性とコントロールが求められる大会だ。
*ワインとコーヒー*
世界大会のサポート役は現在久留米で開業しているロースターの森崇顕さんに依頼した。一緒にワイン会をやる仲で、森さんは後藤さんのワインの先生だとか。コーヒーとワインは通ずる所が多いというのが業界の定説。世界の舞台で気持ちが舞い上がってしまうような場面でも彼は「いいんじゃないかな」と言うだけだった。しかしそれがすごく良かったという。ワインを通して「いいと思える味」を共有できており、お互いの味をわかっていたからこそ良いサポートになったという。面白いことに二人が焙煎で出すコーヒーの味はワインの好み味と同じように仕上がっているらしい。
*味の落としどころ*
前回取材した岩瀬さんと同じく後藤さんも「コーヒーの味に答えはない」と全く同じ意見だ。ただ後藤さんは「結局はその人の好みが味の落としどころ」と話していた。何を美味しいと思い、心地よく感じるか、常日頃コーヒーに向き合う後藤さんならではの答えだ。後藤さんが狙っている味は「いつもお客さんが美味しいと思ってもらえる味」だという。仮にたまたま飛びぬけて美味しい味のコーヒーを焙煎してそれを提供したとすると、「この間は美味しかった」という感想になってしまい、普段の味が美味しくなくなってしまうからだという。
*自分の居場所*
最後に焙煎室で焙煎する後藤さんに野望はありますか?と投げかけてみた。後藤さんは笑いながら「70歳になっても自分の居場所はここでありたい」と話してくれた。焙煎をするときに響く生豆の音、焙煎機のインバーターの音がたまらなく好きで、焙煎機の横に立つと気分が盛り上がって仕方ないという。
座右の銘を書いてほしいというお願いに「苦みの中に甘さがある」とひと言。名言です!
文・写真 山口美奈子
*店舗情報*
「豆香洞コーヒー」
住所:大野城市白木原3-3-1
電話:092-502-5033
営業時間:11:00~19:30
定休日:水曜/第2・4木曜